Menu

いつもはプレゼン資料のデザインを扱う当サイトですが、今回は「構成」について。と言っても、資料の見た目と中身は実際のところ密接に結びついており、優れた構成なくして美しいプレゼン資料はあり得ません。そこで当記事では、多くのビジネスパーソンが避けては通れない「製品/サービスの紹介資料」を例に、筆者が普段意識しているポイント(構成要素)をお伝えします。

紹介資料の構成要素

今回取り上げる製品/サービス紹介資料の構成要素は全部で12個。原則は「BtoB(企業間取引)での利用」を前提としていますが、いろいろ使い回しは効くかと思います。ちなみに、すべての項目が常に必要というものではありませんし、かといってあらゆる状況に対応できるものでもありません。必要に応じて項目をカット、ときには別途補足資料を用意する必要もあるでしょう。紹介資料をつくる際のひとつの目安として利用いただければ幸いです。

  1. 最後に
  2. 参考ウェブサイト
01

社会情勢・顧客動向

なぜ、この製品/サービスを気にかける必要があるのか、その背景を説明するパートです。例えばある日突然英語の講座を紹介されてもあまりピンとこないかもしれませんが、もしその前に、英語によって得られる情報の量や鮮度が激変すること、世のグローバル化の流れ、教育に関する助成金といった説明を懇々とされたなら、思わず話にひきこまれることもあるかもしれません。

 とある物事が価値を持つには、それを支える何らかの背景・理由が必要です。そこでまずはその背景・理由を世間一般的なところから固めてゆく。資料の前段ではこの話を聞くことに価値がある、相手の当事者意識を喚起することに全力を注ぎましょう。併せて「まわりもみんなこうしている」と伝えられると、更に安心して話を聞いてもらえる可能性が高まります。

 ちなみにこのアプローチは、プレゼン相手が該当市場に興味を持ちはじめて間もない頃、あるいは市場が成熟しきっていない頃、とくに効果を発揮します(ちなみに相手が既に詳しい場合、「それはもう知ってる」という顔をされてしまうかもしれません)。対面で話ができるなら相手の顔色をうかがいながら調節したり、事前に認識度合いを調べておくのがお勧めです。

02

利用シーン

さて、先ほどの「1. 社会情勢・顧客動向」がどちらかというと”外堀”を埋める行為だったとすると、続いては”内堀”の話。人はどこか遠くの得体の知れない物事よりも、身近な出来事に対して強い関心を持つ性質があります。そこで今度はターゲットの置かれた状況に合わせ、該当製品/サービスがどんなシーンで役立つかを具体的に伝えることで、プレゼン相手の当事者意識を高めてゆきます。

 例えばプレゼン資料のデザインテンプレートなら、営業担当者やマーケティング担当、広報担当といったそれぞれの役割に合わせて次のように伝えることができるでしょう。

利用シーン
利用シーン

上記は、「プレゼン資料のデザインテンプレート策定を支援するサービス」を紹介する資料の一部です。元の資料はこちらをご覧ください(≫いつものプレゼン資料が見違える!背景デザインを駆使してストーリー展開にメリハリを与える方法

特に利用シーンは、ターゲットが直面している課題や期待する未来をどれだけリアルに再現出来るかに正否がかかってきます。そのため日頃顧客の振る舞いをよくよく観察したり、相手の視点に立って物事を考えるクセをつけておくことが、良い利用シーンを制作する上で重要といえます。

03

事例

製品/サービスのアピール材料として、やはり「事例」は欠かせません。特に同業界・同業種、なかでも「顧客が日頃気にしている企業の名前」というのは強力で、その効果は案件の担当者だけに止まらず、その後の上申・稟議においても、確かな実力の裏付けとして機能します。

 そのため、事例は「実名が公開されている」という点が重要です。事例元との調整には相応の手間とコストがかかりますが、それを押しても事例には労力を費やす価値があると言えるでしょう。

 その他、具体的な数値(売り上げが○○円アップした、成約率が○○%向上した、など)や顧客のリアルなコメント、顔写真を添えられると、さらに事例の信憑性を高められます。さらに欲を言えば、ストーリーだった読みものにまでもっていきたいところ。いつの時代でも人の心を捉えて離さないのは、良質な物語に他なりません。

04

製品/サービスの概要(○○とは)

製品/サービスの紹介はいきなり詳細を語るのではなく、概要から入っていくとスムーズです。まずはひと言で言い表したり、キャッチコピーに続けて百数十文字程度の短文で全体像を伝えられると良いでしょう。

 その際、専門用語は使わずなるべく平易な言葉で説明することが大切です(顧客が専門家の場合はこの限りではありません)。人はまったく未知の単語を自分と無関係の事柄と捉える傾向があるため、できれば顧客が普段馴染みのある単語の方が、製品/サービスをより身近にイメージしてもらいやすくなります。

 ちなみに、概要(紹介文)はひとつではなく、文字数や見せ方でバリエーションをつくっておくと、思わぬところで役立つかもしれません。これは例えば、自社ウェブサイトへの転載やキャンペーン展開、ビジネスパートナーへの再販依頼など、紹介文の言葉がメディアやシーン、立場によって微妙に変化するためです。その場その場で対応するよりもまとめて整理していたほうが、品質維持やブランディングを効果的に進める上で賢い選択といえます。

製品/サービスの概要(○○とは)
製品/サービスの概要
05

特徴

紹介資料の要素として定番中の定番である「特徴」。しかし、この要素は少しやっかいで、扱う製品/サービスによって記載内容を適宜調節する必要があるかもしれません。例えば、顧客が得られるメリットを中心に記載するケースもあれば、製品/サービスのスペックを前面に打ち出したほうが良いケースもあるでしょう(後者は特に新しい技術が次々とリリースされるテクノロジー製品にフィットしやすいです)。その他、実績数や公的認証、リーズナブルな価格設定など、顧客がその製品/サービスを選択する決め手となる情報を臨機応変にアピールするのが、この特徴パートとの正しい付き合い方です。

 なお、注意事項としてもうひとつ。特徴は「自社製品/サービスに偏った主張のように見えやすい」点に気をつけましょう。記載内容の自由度の高さと裏返しになっているかたちですが、従って特徴は客観的且つバランス感に配慮して言葉を選び、顧客に不信感を与えるような表現は極力避けるのがお勧めです。その他、先入観で特徴を読み飛ばされないように、見出し(キャッチコピー)を工夫したり、イラストや写真をアイキャッチに利用して、プレゼン相手の関心をひく仕掛けを併設するのも得策といえます。

06

機能

さて、ここまでの1〜5が「顧客の興味を引きつける」パートだったとすれば、ここからは「製品/サービスのことを知ってもらう」フェーズ。言葉のトーンを少し下げ(売り込み感を抑えて)、事実をベースに且つ具体的に(感情的ではなく、論理的に)、プロダクトの機能とそれによってもたらされるメリットを紹介しましょう。

 記載項目は優先順位づけや依存関係をしっかりと把握し、アピールしたいものは前方に大きく、添えておきたい程度のものは後半にコンパクトにまとめるなどしてメリハリを効かせると、ターゲットに大切な情報が伝わりやすくなります。なお「仕様」について細かな記載が中心になる場合は、「表」や「箇条書き」を駆使して情報を整理し、見やすい紙面となるよう心がけましょう。

機能(提供サービス)
機能(提供サービス)
07

価格

価格のパートでは、まず顧客の需要が多そうな組み合わせで「参考価格」を掲載するのがお勧めです。こうすることで、顧客は製品/サービスの購入を具体的にイメージしやすくなりますし、大体の金額感も把握できます。これはつまり、そもそも金額の折り合いがつかない場合は不要なやりとりを回避する効果も期待できるため、参考価格の提示は製品/サービスの利用者と提供者双方にとって、メリットのある行為と言えるでしょう。

 また、金額は「右揃え」や「3桁ごとのカンマ区切り」「単位を揃える」など記載方法を工夫すると、ぱっと見で認識しやすく、誤読を回避しながら相手に情報を伝えることができます。なお、価格表の記載にあたっては「6. 機能・仕様」の仕様と同じように「表」を使って数字を整理してみせると、細かな数字を目で追う際に便利です。

08

利用の流れ

低単価の日用品ならともかく、一般に高額で複雑な法人向け製品/サービスなら、購入から使い始めるまでに諸処の段取りが必要になるのが普通です。申込書の送付依頼から、導入前の事前調査、引き渡し日程の調整、トレーニング、定期メンテナンスなど、その作業項目が多岐にわたることも決してめずらしくありません。

 こうした製品/サービスの紹介にあたっては、購入意思表示から利用開始(場合によっては利用中も含めて)までに発生する一連のやりとりを記した「ご利用の流れ(フロー)」を準備しましょう。フローには導入中に発生するイベントを時間軸に沿ってプロットし、且つ製品/サービスの利用者/提供者お互いのタスクがはっきり識別できるよう記載します。自分がいつ、どれだけの作業をする必要があるかが分かれば、導入の計画もきっと立てやすくなるはずです。

09

良くある質問と回答(FAQ)

毎回決まって聞かれる質問があるなら「よくある質問と回答(FAQ)」として模範回答をまとめておくと便利です。いつもの質問ならこれだけで対応することができますし、他愛も無い質問を遠慮する顧客に対しても、それとなく答えを示せます。その他、ここまでのパートで紹介しきれかった製品/サービスの魅力をQ/Aのかたちで補うという使い方も可能です。

よくある質問(FAQ)
よくある質問(FAQ)
10

留意事項

免責事項や諸注意など、少し言いにくいことを伝える際には、ある程度相手を話に巻き込んでからの方が安心です。特別な理由が無ければ、留意事項は資料の後半にそっと、ただししっかりと認識できるように配置しておきましょう(間違っても、不都合な事実を隠すためではありません)。ちなみに、時々資料の表紙や冒頭部に小さな文字で、留意事項をびっしり書き込んでいるケースも見受けられますが、これはあまり優れた振る舞いとは言いにくいです。のっけから相手の出鼻を挫くような伝え方は効果的ではありませんし、誰だって「やってはいけないとこと」よりも「やった方がいいこと」から話を聞きたいのです。留意事項の差し込み方ひとつをとっても、プレゼン資料のとっつきやすさは変化します。

留意事項
留意事項
11

問い合わせ先

さて、いよいよクロージング。ここではプレゼン相手に期待する次のアクションをはっきりと示しましょう。例えばそれが「問い合わせ」なら、連絡先や手段(メールかそれとも電話)、受付している曜日や時間帯など、一連の情報を過不足無く提示することが相手の行動を促すうえで大切になってきます。というのも、人はアクションに必要な情報に不明確な点があると、行動そのものを面倒に感じてしまう傾向があるからです。できれば主/副担当者の名前も併記しておくと、ターゲットの心理的な障壁を取り除くうえで良い結果が得られるでしょう。

12

キャンペーン

未知の製品/サービスの購入は、紹介資料をどれだけ工夫しても、顧客担当者に相応の負担を伴うもの。それを押しても「試してみたい」と思わせるなら、やはりキャンペーンが常套手段です。無料トライアルや期間限定の特別プライス、他では手に入らないノベルティやクーポンなど、プロダクトの属性や販売チャネル、ターゲットの性質に応じたインセンティブを設定し、行動を後押しましょう。且つ紹介資料ではキャンペーンの存在が必ず伝わるよう、資料の最後部はもちろん表紙にも、大型のアイキャッチを使ってしっかりとアピールするのがお勧めです。

最後に

以上、伝わる製品/サービス紹介資料の構成要素として12個の項目を紹介しました。

 なお、当記事ではあまり触れていませんが、良質な紹介資料を制作するうえで、ひとつ非常に重要なポイントがあります。それは「ターゲット設定」です。例え同じ製品/サービスであっても、それを「立場の異なる顧客(例:担当者、経営層など)」や、「職種(例:営業、企画…)」、「検討の進行度合い(例:情報収集段階、競合製品の比較中…)」など、紹介する相手によって伝える内容や伝え方がまったくといっていいほど変わってきます。

 プレゼンの成功率を向上するなら、取り扱っている製品/サービスを把握するのはもちろん、それを紹介する相手のことをよくよく観察、理解する必要があります。相手の望むかたちで情報を提供できれば、何も押し売りする必要など無く、向こうから積極的に話を求めてくるはずです。

参考ウェブサイト

当記事では企業間取引における紹介資料の構成要素を紹介しましたが、研究発表ならこちらの記事が参考になります。併せてぜひ。

あわせて読みたい

伝わる文章の書き方―プレゼン資料の文章力

伝わる文章の書き方―プレゼン資料の文章力

他人のプレゼンを聞いていて、どこか軽薄な印象を感じたことはないだろうか?作者の真意とは裏腹に、伝え方で損してしまうプレゼン資料―そんな資料には「文章力」が欠けているかもしれない。文章の書き方のコツを紹介する。
News Letter
新着記事やイベント開催情報をメールでお知らせします。
プレゼンテーションデザイン講座動画版
プレゼン資料のデザインを動画で学ぶなら。プレゼンテーションデザイン講座は、当サイトのコンテンツをベースとしたノンデザイナー向けのビジネスデザイン講座です。
10/26 講座開催
お申し込みは10/24 23:55まで。