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「Noto Sans JP」というフォントを知っていますか? ウェブ制作に関わる人なら誰もが知る定番フォントですが、ここ最近ではAIが生成するスライドによく使われており、目にする機会が増えていると思います。ところでこのフォント、現在のパワーポイントで利用すると、後でトラブルが発生する懸念があるため注意が必要です。そこで今回はなぜトラブルが起きるのか、そして現時点で取れる対処法を解説します。

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「Noto Sans JP」フォントとは

まずは「Noto Sans JPって何?」という方向けに、このフォントがどんなものなのか、ざっと紹介します。

Noto Sans JP

Noto Sans JP(ノト・サンズ・ジェイピー)は、GoogleとAdobeによって共同開発された高品質な角ゴシック体です。見た目はオールドとモダンの中間をいく、まさに空気のような良い意味で主張しない字形をしており、どんなシーンにも柔軟に対応できる汎用性をもっています。

Noto Sans JPのウェイト展開

また豊富なウェイト(文字の線の太さ)が用意されていることも大きな魅力。極細(Thin)から最太(Black)までのバリエーションを利用できるため、繊細な本文はもちろん、力強い見出しにもしっかりと対応することが可能です。

 併せてオープンソースのライセンス形式で配布されていることから無料で安心して商用利用でき、その結果多数の日本語ウェブサイトに採用されているのはもちろん、プレゼン資料においても同様に重宝するフォントです。

 そして、このNoto Sans JPは、2025年4月前後の「更新プログラム(Windows Update)」によって、Windows標準搭載のフォントになりました。

Windows 10/11に「Noto」フォントが標準搭載へ|窓の杜

これにより、今までNoto Sans JPを利用するのに必要だった個別のダウンロード・インストールといった作業が不要になり、一見すればプレゼン資料制作におけるフォントの選択肢の幅が広がったかのように見えたのですが……、パワーポイントでの利用という点では、別の問題が引き起こされてしまったというのが筆者の認識です。

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パワーポイント × Noto Sans JPの
組み合わせで発生する問題

それでは一体どんな問題が起こるのでしょうか? 現在、Windowsに標準搭載されている「Noto Sans JP(明朝体のNoto Serif JPも含めて)」をパワーポイントで利用すると、以下の現象が発生します。

  • パワーポイントでPDF出力(名前をつけて保存→PDF)すると、文字のウェイト(太さ)が全て極細になる
  • 文字揃えの「両端揃え」が効かない
PDF出力すると、文字の太さが全て極細になる

上の図はNoto Sans JPで作ったスライドを「画面上の表示(全画面表示・編集中の表示など)」と「パワーポイントの保存機能でPDF化した後」で比較したものです。後者では、文字の線の太さが全て「極細(Thin)」になっていることがわかります。

両端揃えを指定しても、実際には動作しない

続いてこちらは、Noto Sans JPを使って記載したテキストに、文字揃えの「両端揃え」を適用したサンプルです。期待としては、改行部が一直線に揃ってほしいのですが、実際には両端揃えが効かず、結果として「左揃え」になっています。

 ビジネスシーンでの利用を考えると、文字揃えについてはなんとか許容できるかもしれないものの、ウェイトの極細化ははっきりいって厳しいと思います。さまざまな関係者と共同で作業を進める上で、「どんな環境でも同じ見た目を安定して再現できる」ことは重要なポイントですから、これが解決されない限り、Notoフォントをパワーポイントで利用することは、控えざるを得ないというのが筆者の考え方です。

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なぜこの問題が発生するのか

この問題は次の2点によって発生しています。

  • Windowsに標準搭載されているNotoフォントは「バリアブルフォント」
  • パワーポイントを含むMicrosoft Office製品は、バリアブルフォントに十分対応できていない

さて、ここでまた聞き慣れない言葉が出てきたかもしれません。まずは「バリアブルフォント」について。これは、Adobe・Apple・Google・Microsoftによって共同開発された新しいフォントのフォーマットのことで、文字の線の太さや幅・傾きなどを連続的に変更することができるという優れものです。

 ということで、以下にサンプルを用意しました。緑色のスライダーのつまみを左右に動かしてみてください。文字の太さがほぼ無段階に変化していくことがわかります。つまり従来のフォントにはできない微細な調節・新しい表現が可能なフォーマットといえます。

Weight:400

また、フォントファイルのあり方も、バリアブルフォントでは変化しています。以下は従来(static)形式のフォントとバリアブルフォントの違いを表したものです。従来形式ではそれぞれのウェイトごとにフォントファイルが存在しているのに対して、バリアブルフォントではこれがひとつのファイルにまとまっています。

従来形式のフォントとバリアブルフォントの違い

ということで、文字の形を細かく調節できたり・フォントの実体ファイルの構造が変化しているなど、さまざまに進化したバリアブルフォントですが、その進化ゆえ、これにアプリケーションが追いついていないという状況も生んでおり、そしてまさにパワーポイントを含むMicrosoft Office製品が、これに該当している状態です。Microsoft社の学習サイトの情報や、AIサービスである「Copilot」で調査したところ、2026年1月現在、対応時期は未定の様子です。

PowerPointをPDF化するとNoto Sans JPのウェイトがすべてThinになる
AI(Copilot)の回答|2026年1月時点

Office製品の対応が間に合っていないのであれば、バリアブル版Noto Sans JPのWindows OS正式採用はより慎重に扱ってほしいところですが、同フォント導入の背景である「日中韓のWebブラウジング改善」が優先された結果なのでしょう。

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では、バリアブルではなく、従来形式のNoto Sans JPは利用できないのか

この問題の原因がバリアブルフォントにあるならば、従来形式(static)のNoto Sans JPを使用することで、問題を解決できるはずです。具体的なアプローチとしては次のものが考えられます。

  1. 1)バリアブルフォントのNoto Sans JPはそのままに、従来形式を追加インストールして使用する
  2. 2)バリアブルフォントのNoto Sans JPは削除して、従来形式に差し替える

まず1について、Noto Sans JPはGoogle社のフォントサービスである「Google Fonts」から、バリアブルフォント/従来形式のフォント共にダウンロードすることができます。そして後者をWindowsに追加インストールすることができますが、あまり期待するような動きにはなりません。筆者の手元の環境で試してみたところ、パワーポイントのフォントリスト上にひととおりのウェイト(太さ)が表示されているものの、モノによってはバリアブル、またモノによっては従来形式といったようにまだらに認識される状態になりました。運用は率直にいって厳しそうです。

従来形式のフォントを追加インストールしても、期待する動作にはならない。

であるならば、バリアブルフォントを削除してしまえばいい(2)、と思うかもしれませんが、これもまた難しいのです。同フォントは「システム保護対象フォント」に指定されているため、簡単には削除できません。筆者はWindowsのセーフモードなどを駆使して削除しましたが、本来的には行うべきではないでしょう(会社の業務用PCなどにおいては、なおさらです)。その上今後のWindows Updateにおいて、また復活してしまう可能性も否定できません。

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現状取れる対処法

残念ながら現状完璧な対処法はありません。原則的には他のシステムフォント(游ゴシック・メイリオ……)に置換する、というのが現実解です。しかし、「どうしてもNoto Sans JPの見た目を使いたい」ということであれば手はあります。それは「源ノ角ゴシック」を使う方法です。

Noto Sans JPとルーツを同じくするフォントに「源ノ角ゴシック」がある

実は「Noto Sans JP」と基を同じくするフォントに「源ノ角ゴシック」というものがあり、前者はGoogleから、後者はAdobeから提供されています。なぜ同じ書体のフォントがGoogle/Adobeから提供されているかについて細かい話は割愛しますが、それぞれフォントの名前が異なるため、一台のPC(OS)に同時にインストールしても無理なく識別することが可能です。つまり「従来(static)形式の源ノ角ゴシック」を利用すれば、パワーポイントでNoto Sans JPの見た目を安定して利用することができます(厳密にはウェイトの数や呼び方が異なるといった差はあるものの、プレゼン資料作りに限って言えば、問題になることはないでしょう)。

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源ノ角ゴシック(static版)の
インストール方法

それでは源ノ角ゴシックの入手・インストール方法を解説します(できれば、Fontbaseなどのフォント管理ツールを使った方がよいのですが、今回はOSに直接インストールする手順を紹介します)。

STEP 1|源ノ角ゴシックの公式ダウンロードページにアクセス

以下のアドビ社が管理するGitHubにアクセスします。

源ノ角ゴシックの公式ダウンロードページ

STEP 2|7種類のウェイトを全てダウンロード

以下の一連のフォントファイルを全てダウンロードします。

  • SourceHanSansJP-Bold.otf
  • SourceHanSansJP-ExtraLight.otf
  • SourceHanSansJP-Heavy.otf
  • SourceHanSansJP-Light.otf
  • SourceHanSansJP-Medium.otf
  • SourceHanSansJP-Normal.otf
  • SourceHanSansJP-Regular.otf

STEP 3|インストール

ダウンロードしたフォント全てを選択した状態で右クリックし、「インストール」を実行します。これでインストールは完了です。

フォントを全て選択して右クリック、インストールを実行
  • インストールしたフォントは、通常「C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Microsoft\Windows\Fonts」に保存されます(Windows 11の場合)。
  • フォントを削除するときには、「システム > 個人用設定 > フォント」メニューにて「源ノ角ゴシック」を検索し、アンインストールします。

フォントの置換方法

なお、資料全体のフォントを置き換えるときは「フォントの置換」機能が便利です。「ホーム」タブの「フォントの置換」ボタンから機能を利用することができます。

資料全体のフォントを置き換えるなら、「フォントの置換」機能が便利

最後に

Windowsには「メイリオ」や「游ゴシック」といった優れた和文ゴシック体が存在するものの、いずれも少しクセがあり、手放しでは利用しにくいというのが筆者の率直な感覚です。そのため今回の「Noto Sans JP」のOS標準搭載化には期待していたのですが(NotoはNotoで、また別のクセがあるようですが)、プレゼン資料への適用はもうしばらく様子見した方が良さそうですね(正直に言うと、早く使いたいです)。Microsoft Office製品の早期のバリアブルフォント対応を期待します。

裏表紙

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