伝わる文章の書き方―
プレゼン資料の文章力
他人のプレゼンを聞いていて、どこか軽薄・上から目線な印象を感じたことはないだろうか?作者の真意とは裏腹に、伝え方で損してしまうプレゼン資料―そんな資料には「文章力」が欠けているかもしれない。優れた文章は、シンプルで筋が通っているのは勿論、相手への配慮が行き届いているものだ。文章の書き方のコツを紹介する。
文章の型
おもしろい文章を書くことは難しい。しかし「わかりやすい文章」なら話は別だ。論理的かつ明快で、一読ですっと頭に入ってくるような文章。そんな文章を書くのに良いトレーニング方法がある。それは「型」だ。柔道や剣道、茶道や華道と同じように、文章にも型がある。まずは型に習って文章を組み立て、使いこなしてゆくことで、効率的に文章力が身についてくる。まずは次の基本形を意識してみるといい。
主張 | 私は □□□ の □□□ について □□□ と考えます。 |
---|---|
根拠 | なぜなら □□□ だからです。 |
再主張 | それゆえ □□□ すべきです。 |
例えば、以下の文章。
デザインの整ったプレゼン資料はわかりやすい。なぜなら文字や図版などの情報に加えて、それらの大きさや色、位置、余白の取り方に、作者の意図を読み取ることができるからだ。プレゼン資料の見た目には、手をかけるだけの価値がある。
さらに「主張」と「再主張」のあいだに厚みを持たせることで、文章は説得力を増す。
主張 | 私は □□□ の □□□ について □□□ と考えます。 |
---|---|
根拠 | なぜなら □□□ だからです。 |
定説 | 一般に □□□ とされています。 |
権威付け | ××によれば □□□ とされています。 |
具体例 | たとえば □□□ です。 |
事例 | かつて □□□ ということがありました。 |
比喩 | まるで □□□ のようなものです。 |
疑問 | なるほど(たしかに) □□□ という面はあります。 |
反証 | しかし □□□ ではないでしょうか。 |
再主張 | それゆえ □□□ すべきです。 |
先ほどの例に「具体例」と「疑問」「反証」を追加したのが以下。
デザインの整ったプレゼン資料はわかりやすい。なぜなら文字や図版などの情報に加えて、それらの大きさや色、位置、余白の取り方に、作者の意図を読み取ることができるからだ。たとえば文字なら「書体」や「行間・行長」「見出しと本文の大小差」などによって、資料の読みやすさに見違えるほどの差がついてくる。たしかにビジネス文書は見た目よりも中身が重視されるものだが、情報を直感的にやりとりする上で、デザインには多くの利点があると言えるだろう。プレゼン資料の見た目には、手をかけるだけの価値がある。
言葉を聞き手に合わせる
人は知らない言葉を自分と無関係の事とらえる癖がある。ゆえにプレゼン資料の文言は、聞き手の理解レベルに合わせて選択すると丁寧だ。固有名詞や専門用語、テレビや新聞で話題になった時事用語など、相手が知らない可能性のある言葉は極力避け、ときにはフォローできるよう心がけたい。
リスティング広告のCPA10%改善を目標とする。
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検索連動型広告の引き合い獲得単価10%改善を目標とする。
スマートフォンのアプリをスワイプして切り替える。
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スマートフォンのアプリをスワイプして(画面を指でなぞって)切り替える。
漢字をひらく
漢字とひらがなのバランスで紙面の印象は変わる。漢字が多すぎれば物々しくて窮屈になるし、反面ひらがなばかりだと散漫で稚拙に見える。プレゼン資料の文章なら、気持ち漢字をひらく(ひらがなにする)くらいがお勧めだ。
予めご了承頂けます様、御願い致します。
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あらかじめご了承いただけますよう、お願いいたします。
肯定表現
人間の潜在意識は、否定文を理解できないという。「ミスをするな」と言われたときに、頭の中に思い描いているのは、ミスしている自分だ。ネガティブな言葉はネガティブな結果を引き寄せる。プレゼン資料では肯定表現を使おう。
社内資料はカラープリントを極力避けてください。
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社内資料はモノクロプリントでお願いします。
相手を主役に
プレゼン資料の文章は、当社のプロダクト/サービスの良さを語るよりも、相手にどんなメリットがあるかを伝えよう。貴方が貴方自身に興味があるように、相手も相手自身の利益に興味がある。自分のことを語るばかりでは、決して相手の心は動かない。相手を主役にするシンプルな方法は、主語を相手にすることだ。
当社のサービスは、○○のコストを従来の三分の一に削減することを可能にします。
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お客さまは、〇〇のコストを従来の三分の一に削減できます。
バリエーション
同じフレーズの繰り返しは文章を単調に感じさせる。単語はもちろん書き出しや語尾など、文章には一定の変化をもたせたい。単語のバリエーションなら、類語辞典の利用がお勧めだ。
「効率的な」、「信頼と実績の」、「長年培ったノウハウで」……こうした言葉は一瞬魅力的に聞こえるかもしれないが、言葉そのものにあまり意味は無い。これらの言葉は確かな理由や具体的な根拠とセットになって、はじめて力をもつのだ。
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「効率的な」、「信頼と実績の」、「長年培ったノウハウで」……こうした修飾句は一瞬魅力的に聞こえるかもしれないが、言葉そのものにあまり意味は無い。これらは確かな理由や具体的な根拠とセットになって、はじめて力をもつのだ。
推敲
プレゼン資料を書き終えたら、最低でも2回は読み返してみよう。とくに一晩寝かせてから見直すと、なるほどと感じる一方で、冗長な表現や言葉の不足、論理が飛躍している部分など、自身の突っ込みどころの多さに気がつくはずだ。削ってみたり、補ったり、スライドの順番を入れ替えてみたり。過去の自分と対話を重ねることで、プレゼン資料の完成度合いを高めることができる。
最後に
当サイトでは、プレゼン資料のデザイン・レイアウトを主に扱っているが、それは決して文章を軽視しているわけではない。もし、いい加減な文章の資料をキレイに整えたところで、それは何か気味の悪いものになるだろうし、そもそも美しくなど出来るはずがないのだ。
今度「これは!」というプレゼン資料を見つけたときには、ぜひ読み込んでみて欲しい。その資料が優れているのは、決して見た目だけではないはずだ。